こんにちは。まさおです!
最近教育ICT系のニュースを見ていると、AIによる在宅受験の不正監視システムの話題をたびたび目にします。
過去にこのブログでもオンライン受験を拡大するには不正監視が必要との記事を書いたことがありますが改めてこのニュースを見ると、「本当にそれでよいのか?」と思うようになりました。
今回は「AIによる在宅受験不正監視システム」について取り上げます。
AIによる在宅受験不正監視システムとは?
AIによる在宅受験の不正監視の仕組みとはどのようなものでしょうか?以下の記事がわかりやすいので、ご紹介しておきます。
端的に言うと、受験者の目の動きや行動をAIが解析をして不正行為が疑われる行動を検知するというものです。
オンライン試験では、本人以外が受験するいわゆる「替え玉受験」や試験中に参考資料等を参照するカンニング等が抑止できない可能性があり、入試のオンライン化は少し時間がかかるといわれています。このブログでもこちらでその話題を取り上げています。
一方で、その問題をこのシステムが解決してくれるなら、一気にオンライン受験という分野が開拓される可能性もあり、期待される新技術ということができると思います。
不正検知の前に解決すべきオンライン受験の課題も
一方で、このシステムが安定稼働するには、いくつかの前提となるべき課題があると思います。
ペーパーテストのオンラインテスト化
現在、紙で行われているテストをオンラインテストに変換するのは意外と大変です。自覚している人は少ないかもしれませんが、紙のテストは紙のよさを最大限引き出すように作られています。
例えば、
・冊子形式で表紙に注意事項が書いてある点
・ページをめくると問題が見られる体裁
・自由に記述ができる解答用紙
・受験生の解答の書きやすさに配慮をした解答用紙のサイズ
などです。
あまり考えのない人がこれをそのままオンラインテストにしてしまうと、とても使い勝手の悪い、ユーザー中心的でないテストが出来上がります。
特に、記述式の解答用紙をそのままパソコン上で入力させようとした場合、受験生の中には自分の頭の中に浮かんでいる解答を思い通り解答欄が入力できず、泣き出すか怒り出す人が出てくることでしょう。
紙のテストをオンラインテストに移植するときは丁寧な検討プロセスが必要になってくるはずです。
良質なPC環境とネットワーク環境が必要
こちらの課題の方が難しいのかもしれませんが、オンラインテストを受験させる際にはPC端末やネットワーク環境を受験に耐えうるレベルに整える必要があります。
オンライン受験の場合、数枚の画像とテキストデータのやり取りだけであれば、多少環境が劣悪でもうまくいくのですが、動画を再生したり手書きの解答を提出させたりといった大きめのデータのやり取りが長い時間発生する場合はネットワーク環境が重要になってきます。
たとえば、60分のテストを5科目オンラインでやろうとした場合は、少なくとも5時間は一定量の通信が継続的に行われることになります。
さらに、AIによる監視システムで受験中の画像を随時サーバー側に送るとなれば、テストシステムと受験監視システムの2つが同時に稼働する環境が必要です。
オフィスにあるようなPCであれば全く問題ないのですが、受験生の自宅にあるPCの場合、OSが古かったり(Wndows7ならまだしも、WindowsXPなんてこともあり得る…)、ネットワークが極端に遅かったり、時間帯によって速度にばらつきがあったりといった問題が出てくる可能性があります。
私が見ているオンライン授業の現場でも、受講者のネットワーク環境が授業に耐えられない例は多数ありました。10%程度はそのような環境が紛れてくる前提で、受験時に環境整備をお願いするような仕組みづくりが同時に必要になってくるはずです。
不正と判定されてしまう「濡れ衣」は起こらないか
AIによる監視は一種の危うさを含んでいます。それはAIの判定が正しさを何をもって保証するのかということです。
上記の記事では、当面、人も一緒に不正かどうかを判定するということなのですが、AIを使っている以上、人と一緒に不正を検証して、「不正である」と認定したデータをAIにラーニングさせることになるはずです。
その先にはAI単独での判定を視野に入れないと予算的に見合わないということになってくると思います。自動運転と同じ考え方です。
その中で、不正をしていないのに不正と検知されてしまう人がどの程度出てくるかというのが問題になります。人が試験場で監督をしていても不正かどうか見極めるのが難しい事例があるので、AIが正しく検知するのは少し(5~10年程度?)時間がかかるのではないかと思います。
AIに不正と疑われた人は、激しく傷つくでしょうしAIを恨むと思いますので、あまりよい未来にはならないかもしれません…。
不正検知システムへの対策が出てくる可能性もある
上記のような不正検知(悪事をさせない仕組み)というのは、必ずそれを乗り越えて不正をしようと知る輩を生み出します。
コンピューターウイルスの世界はまさにそのような状況を呈していますが、不正をさせない仕組みに莫大なお金を使っても、それに対する抜け道をどこかで見つけることでさらに対策をしなければならないという、いわゆる「いたちごっこ」が生まれる可能性があります。
本来は、受験生の人間性を信頼してテストの監視は最低限で行うべきだと思いますが、「このような不正監視を行います」という宣言がかえってそれを乗り越えようとする人間を生むとすると皮肉なものだと思います。
オンラインテストのあり方から考え直すべき
このように考えてくると、上記のような問題点を乗り越えてまで、今やっているテストをオンライン化しなければならないのかという疑問がわいてきます。
むしろ、オンラインの試験というのは、「与えられたテーマに対して何を調べてもよいから自分なりの解答をレポート形式で提出させ、その内容が本物かどうかを面接で確認する」といった方向に転換すべきなのではないかと思います。
ここ10年くらい、「カンニングOKの世の中」とか、「知識はググればわかる時代」などと言われてきたにもかかわらず、知識を厳密にチェックしたいテストが生き残り続けること自体が問題なのだと思います。
この転換は数十年後に大きな分岐点として振り替えられるポイントになると思います。安易に従来のやり方を踏襲するのではなく、オンライン入試の本質をきちんと考えて対応することが重要です。
高校入試・大学入試ともに知識のチェックは学校の成績提出などで済ませて、もっと別の視点で入学者の選抜を行う仕組みを考えて行くべきだと思います。
今回は半分くらい自分の意見になってしまいましたが、このままテストが変わらなければ、学び方も変わらないことになります。今回のコロナの一件は仕組みを大きく変えるには十分なきっかけだと思いますので、前例にとらわれず自由に議論をして、変えられるところから変えてみるのがよいと思います。
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